前回の記事で『持続化給付金の受給要件の拡大の動き』について、梶山弘志経済産業大臣の会見などから今後の可能性を考えました。2020年5月15日の梶山大臣は「雑所得の扱い方」に活路を見いだすような発言をしました。今後の「持続化給付金の動き」を予測してみます。(トップ写真は、経済産業省のサイトから梶山大臣の会見動画の転載)
とっくん社長は「持続化給付金」の動きを何度も記事していますね。今日(5月15日)は何か動きはありましたか?
現時点で、持続化給付金お「受給要件の拡大」について、正式な案は出されていません。ですが、今日(5月15日)の梶山経済産業大臣の記者会見で『雑所得の扱い』で新たな解釈を加えることが明らかになりました。
【持続化給付金の受給要件拡大】雑所得の吟味か【経産大臣会見】
本日朝の梶山大臣の記者会見の抜粋です。
【梶山経済産業大臣の定例記者会見概要】 2020年5月15日(金曜日)8時26分~8時32分
Q:持続化給付金について、フリーランスも含めた対象拡大で、今週中にも結論というふうにおっしゃっていましたけれども、検討状況をお願いします。
A:フリーランスの方々の中には、事業からの収入を雑所得とか給与所得の元となる収入に計上して、結果的に持続化給付金の対象とならない方もいらっしゃるというのが現状であります。事業性のあるこうした方の事業継続を支えることは大変重要な課題であり、経済産業省として支援策を講じることといたしました。
雑所得については様々な種類の収入が計上されております。所得税法、9分類があるんですけれども、その他の分類に関しては全部雑所得に計上している例が多いと思っております。そうした中でどのような形で事業の実態を把握できるかという点も含め、制度の詳細設計を今進めているところであります。今週中にというお話をしましたけれども、今週ずっと制度の詳細設計等、与党との、与党を中心とした関係箇所との調整を今しているところでありまして、昨日の総理からの2次補正編成指示があったことなども踏まえて、現在、先ほど申しましたように与党側との調整を進めておりまして、早急に成案を得るべく全力を尽くしてまいりたいと思っておりまして、できるだけ早く成案を得たい。そして、成案を得たら、改めて私から皆さんに御説明を申し上げたいと思っております。やる方向であることには間違いありません。
経済産業省サイトから転載(https://www.meti.go.jp/speeches/kaiken/2020/20200515001.html)
これの大臣の会見はどのような意味合いを持つのでしょうか? 解説をお願いします。
大臣の発言の中で『雑所得の(略)どのような形で事業の実態を把握できるかという点も含め、制度の詳細設計を今進めているところであります』という点がポイントですね。
【持続化給付金の制度設計】のプロセスを予想してみると?!
持続化給付金の最大の目的は『売上減少した事業者が事業を継続するための給付』ということです。
法人の場合は、「売上=事業」なので単純明快なのですが、個人事業者は、所得税法上の所得の種類が10つもあります。この「持続化給付金」の目的に合致させるためには、『事業に関する所得を…』ということで、受給要件を「事業所得のみ」としたと思います。
これは、個人事業主で言う「売上=事業収入=事業所得」として、確定申告で提出した分が対象要件としたかと思います。
さらに「持続化給付金」の受給要件は前年同月比(任意の月)の「売上比較」が要件なので、比較する条件が同じであることが最低限必要です。
持続化給付金の制度設計は“消去法”のプロセスではないか?!
ならば…、制度設計上で考えると“消去法”として以下のようなプロセスでこの「持続化給付金」ができたかと予想します。
②受給要件の判断の基準を明確にしたい→確定申告での証拠書類を使う
③事業継続についての“売上”だけを要件にしたい→個人事業者は「事業所得」が対象に
ボクは官僚ではないので、あくまでも「持続化給付金の制度設計のプロセスの予想」しかできません。ただし、ボクも行政で仕事をした経験があるので、行政というのが“公平性の原則”“不正を定める基準”を持ちながらこの制度を作ったであろうと理解しました。
持続化給付金をできるだけ早く「売上減の事業者に届けたい」という制度!!
これは、うがった見方をすれば、政府・与党の選挙対策でもあると思います。
持続化給付金をはじめとする緊急経済対策は、売上減の事業者にとっては“時間との勝負”でもあり、給付する側(国)も受け取る側(事業者)は、できるだけ早くこの給付を実施したい―という考えは一致しているかと思います。
こうしたこともあり、上記のようなプロセスで、1次補正予算の中で「持続化給付金の予算枠を取って、すぐに実施した」ということでしょう。
ところが、個人事業主の「事業所得の枠の要件が、あまりにも現実とは異なるので、国民の不満が募ってきた…」というのがここまでの流れです。
雑所得の選別は可能か?! ~申請者の手間と不正チェック厳格化が!!
これはあくまでも、梶山経済産業大臣の会見での発言を元にした、筆者の予想ですが…。雑所得の中で「事業性を持つもの」については、これを受給要件に加えるということになるでしょう。
前回の記事で、国税庁による「雑所得の事例を紹介」しました。
雑所得とは、上記1から9までの所得のいずれにも該当しない所得をいいます。例えば次に掲げるようなものに係る所得が該当します。
(1) 公的年金等
(2) 非営業用貸金の利子
(3) 著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税国税庁のサイトからの転載です。
ポイントとなるのは『雑所得が、雑所得以外の所得のうち、該当しない所得である…』という点です。これは、個人事業主が確定申告する際に「どの所得に属するか」が明確でない場合などで、雑所得に入れることが多いと考えらます。
雑所得の中身を見直すということは、一度やった「確定申告の数字を変更する」必要があるという意味ですか?
そこが問題になるでしょうね。持続化給付金は、制度を迅速に実施するために「要件チェックを簡素化」しています。雑所得の中身を再吟味することになれば、申請者の手間が増えること、持続化給付金を支給した後の不正チェック時の厳格化が変わってきます。
梶山大臣が『制度の詳細設計等、与党との、与党を中心とした関係箇所との調整を今しているところ…』というのは、これらの作業をやっているのでしょう
(持続化給付金受給のために「会計ソフト」をインストール↓以下をご覧ください)
まとめ:雑所得以外にも「不動産所得」も対象に!! ~筆者の希望
持続化給付金の「受給要件の拡大」については、今国会中(通常国会は2020年6月17日まで)に「2次補正予算案」に組み込まれるはずです。
ということは、早ければ5月下旬くらいから審議が始まり、可決されて施行ということなれば、「受給要件の前年同月比の売上比較」は『5月分』までがその時点での対象月になります。
雑所得の再吟味の方法は「ひと月だけを対象としてエビデンスも提示するのか?」「確定申告そのものの内容を見直すのか?」という点も関わってくることでしょう。制度としては「簡略化・迅速化など」にある意味で逆行する流れになることは間違いないでしょう。
現時点では、持続化給付金の受給要件の拡大の「案」が提示されているわけではないので、筆者としては、経済産業省側の案が出るのを待ちたいと思っています。
さらに言えば、雑所得以外にも「不動産所得」も対象にするよう再検討してほしいと願っています。
最後に…、この記事は2020年5月15日現在の事象を元に情報をまとめています。状況は日々刻々と変わりますので、その点につきご理解のほどよろしくお願いします。