建売分譲住宅を購入する際、最初に提示されていた価格から「値引き」をしてもらうことができるか? 少しでも安く物件を購入したいと考えておられる方にとっては「値引き交渉ができるか?」は関心があると思います。
筆者の不動産会社は、建売新築住宅の仲介を担当していますが、値引きのタイミングは会社によっての“ルール”が異なります。
今回の記事では、建売販売戸数日本一の飯田ホールディングスグループ㈱の「一建設㈱」を中心に、建売住宅購入の「値引き」の実情について、解説します。
今後、建売住宅を購入したいと思っているのですが「値引き交渉」はできるのでしょうか?
建売分譲住宅の販売では、値引き交渉ができる会社とできない会社があります。皆さまの地域で販売されている建売住宅の会社の特徴によります。
建売分譲住宅の「値引き交渉」ができる会社の見分け方のポイント
- 日本一の飯田ホールディングスグループ会社やその他大手の会社は値引きしやすい
- 販売チラシなどで『値引きしました』の広告を出している建売住宅の会社
- 地元工務店や小規模な会社が販売している建売住宅は「値引きをしない」のが普通
- 値引き交渉をする前提として、ユーザー側が購入の意思を具体的に示すこと
飯田ホールディングスグループ㈱は、一建設、飯田産業、アーネストワン、東栄住宅、タクトホーム、アイディホームグループの6社からなっています。
年間の住宅販売戸数は、年間約46,000戸以上。全国の分譲戸建住宅のシェアの約30%を占めており、販売戸数は日本一の数です。
建売分譲販売の市場では、飯田ホールディングスグループとそれ以外の会社に分かれます。筆者の実体験上では、飯田ホールディングス以外の会社は「積極的な値下げはしない」という印象です。
一建設の値引きは?交渉のタイミング・コツ・見極め方!
飯田ホールディングスグループは、全国展開をしているローコスト住宅です。
圧倒的な販売数があるために、他社との価格競争になれば「値引き」に応じることが多いです。
【ネットの質問箱に寄せられた主な質問】
- 一建設は、値引き交渉をした買い手には 補修工事を有償にするなど お金を取ろうとするとかあるのですか?
- 一建設、新築建売り住宅は、完成前又は完成した時点で値引きをしてもらうのは難しいですか?
- 一建設株式会社ってどんな建設会社ですか? この数年後かに倒産とかってありますか?
- 一建設の建売住宅は値下できますか? 不動産屋が紹介する時に「うちなら100万円交渉する」って言っていた
- 値下交渉するように申し込んだら、一建設に「今だと値下げしたばかりだから値引きできない」って言われた
「一建設の値引き」に関するネットの質問箱が多い理由としては、「値引きをやっている事実」をユーザーが知っているということでしょう。
その分、ユーザー側は「一建設がどのタイミングで値引きするか?」「どうやれば値引きするか?」を考えながら購入しようとします。
高額な不動産といえども、売り手と買い手との需要と供給の関係があるので「値引き交渉」もアリです。ただし、全国一の販売数を誇るグループ会社の一建設ですので、「値引き」の交渉は一建設側の告知がベースとなっています。
一建設が値引きができる理由⁈ 他社と異なる資金回収
ここで、一建設がナゼ、値引きができるのか? なんのために値引きをするのか?を考えてみたいと思います。
ハウスメーカーが新築分譲住宅を建築・販売する際、これに必要な事業資金は「金融機関からの融資」で調達します。その多くの場合、現場ごとに資金を借りるので、それぞれの「資金回収のサイクル」が決まっています。
一建設の営業マンから聞いたところによると『一建設は土地の仕入れから建築、販売、資金回収までのサイクルを半年間として目標設定している』ということでした。
一建設と飯田グループは、建築の工期が短いのが特徴です。「工期を短くすること」で資金回収までのサイクルを早くすることができます。
一般的な建売分譲販売会社は、銀行からの融資を元に「資金回収を1年程度に設定」しているのですが、一建設はその半分の期間で資金を回収することを目指しています。もちろん、こうした資金回収の目標設定は、恒常的なものではないとは思います。
一建設の建売販売で「値引き」のベストなタイミングとは⁈
ここからは、建売住宅を購入する際の「値引きのタイミング」について考えてみたいと思います。
一般的に建売分譲業者は以下のような手順で、住宅を販売しています。
建売分譲会社の建築手順と資金回収までの流れ
- 新しく販売する土地を仕入れる(購入)後、土地利用計画図の作成
- 開発許可(都市計画法29条)建築確認(建築基準法6条)完了後広告開始・契約可能
- 建築開始→建築中は客の内覧は困難
- 建物本体工事完成→客の内覧可能
- 建物外構工事等完了→客への契約引渡し可能状態
- 建物完成後1~2カ月
- 建物完成後3カ月以降
どの建築会社も上記のような手順で、住宅を建築して販売します。この中で「値引きのタイミング」がいくつかあります。それを考えていきましょう!
販売会社にとっては「資金回収が確実にできる客」が優先です。しかも、できるだけ早い段階で契約まで締結できたらベストです。
ただし、完成前物件を契約したお客様の中には、建物が完成して内覧した際に「イメージと異なる」と失望して契約解除する人もいます。
建築確認後に契約可能で「広告開始」
建売住宅の「価格」が決定し広告できるのが、上記の建築確認後ですので、これより以前に値引き交渉は通常はできません。
ごく稀なケースとして、不動産投資家などが『この金額ならば即金(ローン特約ナシで)で購入する』という約束を書面にして提出して値引き交渉することはあります。ただし、こうしたことが表に出てしまうと会社の信頼性を損なうので、通常は行いません。
建築中の段階
既に述べたように一建設は建築の工期が他のハウスメーカーよりも短いのが特徴です。
とは言え、更地から造成し、地盤調査、地盤改良、木工事、内装工事、電気工事などの一連の工事が完了するまでは、数カ月はかかります。
現場によっては、ある程度の形ができた物件は、お客様の内覧を許可している所もありますが、通常は、安全性を確保するためにも内覧をさせない会社もあります。
住宅を「内覧ナシ」の状況で購入するお客様というのは、販売者にとってはありがたい存在です。その時点で『購入を約束しての値引き交渉をする客と、建物完成後に内覧で集まる客とを比較』して、どの人に売るか⁈を販売会社は判断します。
建築完成段階
建物本体が完成したら「内覧可能」となります。販売を担当する仲介業者は『オープンハウス』と称して営業マンを物件に張り付かせて営業をします。
販売会社にとっては、この時期が最も物件が売りやすいことになります。同時に「オープンハウス」などで客足の反応を見ながら販売会社「値引きの必要性」を判断します。
完成後1~2カ月
この時期には、販売会社にとっては「売れなかったら困る」というものです。仲介を担当する不動産業者も熱心にお客様に内覧をさせて、契約までこぎつけるように熱心に営業をします。
「値引き交渉」がやりやすい場合もあれば、やりにくい場合もあります。
値引き交渉は、その「建売住宅自体の人気」によって変わります。人気がなく、客足が少ない物件では、値引き交渉がしやすいですし、客足が多い物件は値引き交渉が難しいです。
完成後3カ月以降
「資金回収の目標を半年」と設定している現場では、完成後3カ月以降も売れ残っている建売住宅では、販売会社は「値引きしてでも売ろう」とします。
したがって、完成後3カ月以降の物件は、多くの場合「値引き」をされています。当初の販売価格(広告開始)から数百万円も値下げしているケースもあり、購入者にとってはお得な価格と言えるでしょう。
ただし、売れ残った物件は何かしらの理由がある場合があるので、その点を考慮しての「値引き」と理解すべきでしょう。
一建設の値引きは「決算」がチャンス‼
どのハウスメーカーも、決算前には少しでも売上を伸ばそうという思惑が働きます。
既に説明したように、一建設では、建売の現場ごとに「プロジェクト資金(銀行からの融資)」を使って、土地の仕入れ(購入)から資金回収(住宅販売)までを、半年サイクルで実践しています。
これに加えて、毎年3月末が決算のために、これに合わせて「資金回収」をしようとする傾向があります。特に、建売現場で数棟の住宅のうち、売れ残っているものがあった場合『決算までに買主の支払いが完了することを条件』として、値引きを行う場合があります。
これは、一建設だけでなく飯田ホールディングスグループでよく見られる「値引きのタイミング」です。
一建設の値引きを「オプション工事」でやるのはアリ⁈
一建設を含むローコスト住宅の特徴は、建売住宅の販売価格には「最低限の施設」しか事前に含まれていません。
これについては、グループ会社ごとに「基準」が異なります。さらに、準防火地域などの法規制により、建売販売時に装備しておくべき設備があるため、一概に言えませんが、大まかに言いますと
- 網戸
- 雨戸
- カーテンレール
- テレビアンテナ
- フロアコーティング
このような設備は、買主が住宅を購入後に「オプション工事」として追加発注するという形です。この「オプション工事分を値引き交渉」として使うことができるか?についてですが…
オプション工事は、売主の会社ではなく子会社が担当するので、「オプション工事分の値引き」が必ずしも成功するとは言えません。ただし、あらかじめ「オプション工事のサービス提供」をキャンペーンでやっていることもあるので、ダメ元で交渉するのはアリだと思います。
一方で、オプション工事分は、場合によってはDIYや他業者に発注した方が安い場合もあるので、見極めが重要です。
一建設の建売住宅は「オプション工事ナシ」は、その住宅に住む以上はあり得ないので、それぞれの工事金額の相場は調べて置いた方がいいでしょう。
ちなみに、筆者が建築したローコスト住宅の場合は、テレビアンテナは24時間365日受付対応【生活110番】の方が安かったので、そちらに頼みました。
一建設のマンションの値引きは⁈
建売分譲住宅が中心の一建設ですが、一部にはマンションも販売しています。ただし、大手ディベロッパーのようにマンションの販売数が多いわけではありません。
こうしたこともあり、一建設の「マンションの値引き交渉」に関して事例と実績が少ないのです。ただし、不動産仲介の経験上、敢えて申し上げると「在庫(未販売物件)を多く抱えたがらない会社」なので、値引きについての考え方としたら、建売と共通しているかと思います。
一建設の値引きを「決定」するのは誰か⁈
一建設の中で「値引き価格」を決定するのは誰でしょうか?
その「答え」は分かりません。いえ、正確に答えるとすれば『決定権者が誰であるかは重要ではなく、会社の組織上のプロセスによって決定する仕組みであるから』と言えるでしょう。
会社としては、できるだけ早く資金回収ができるように、住宅を販売したいと考えており、そのために最善な策を講じます。
要するに「値下げをするタイミング」は、その物件の人気や他社物件との比較、今後の見通しなどを会社が判断するということです。
その判断は、社内稟議を経て決定します。稟議を起こすのは直接の担当者で、その後、上司、支店長などを経て本社が決定をします。くれぐれも、仲介販売する不動産業者の権限ではないことは断言しておきます。
まとめ:一建設の値引き交渉は買い手の熱意と根拠で!
一建設の値引きの交渉は、買い手側が熱意と根拠を提示することが重要です。これはどのハウスメーカー相手でも同様です。
熱意とは「本当に買う気があるか」で、根拠とは「住宅ローンの審査の見込みやそれに代わる資金力があること」です。
住宅販売では、高額な不動産を購入者が現金一括で払えないために、買い手はローン会社との契約でお金を借りて住宅を購入します。人によっては「住宅ローンの申請が通らない人」がいますので、そのような人は、熱意(購入意欲)があっても、根拠ナシとして相手にされません。
値引き交渉を成功させるためには、その前提として「熱意と根拠」は必要です。
その上で、値引きのタイミングを見極めた上で交渉をすればいいでしょう。具体的には、一建設側が「値引き発表した直後は、さらなる値引きは厳しい」と思います。
いずれにしても、建売住宅の購入は担当する仲介会社を通して一建設側と交渉するので、「熱意と根拠を形(書面)」にして示すことです。
これらの建売住宅以外でも、同様の金額の住宅を注文住宅で建てることも可能です。ただし、その際は、土地を安く購入できる見込みがあればの話です。注文住宅を建てたいとお考えならば、一建設に限らず複数のハウスメーカーに無料見積もりを依頼するのが便利です。
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