今回のブログ記事のテーマは「社会問題」についてです。皆さまは『全国の自殺者数の推移と、景気の中で失業率の推移との相関関係』をご存知でしょうか? 実は、この2つの推移は驚くほど一致するのです!! この分野の分析は、数量政策学の専門で経済学者の高橋洋一さん(嘉悦大教授)が主張されています!!
元新聞記者の筆者なので、社会問題は得意なフィールドの一つです。
お金がないと自殺率が高まる【高橋洋一氏の論】から資産を考える
しっかりとした『資産がなかったら…』その人の“生存率”に影響を与える―。
2013年に全国の警察が把握した自殺者数は2万7,195人で、2年連続で3万人を下回ったと警察庁が発表した。前年に比べ663人(2.4%)少なかったということです。
自殺の原因・動機は複雑ですが…?!
警察庁では「家庭問題」「健康問題」「経済生活問題」「勤務問題」「男女問題」「学校問題」「その他」に分けて、遺書など自殺を裏付ける資料により明らかに推定できる原因や動機を分析しています。こうした動機は、自殺者1人につき3つまで計上ができ、自殺の原因・動機の統計を取っています。
自殺の原因の6つのうち「経済生活問題」以外の原因・動機は変動なし!!
「家庭問題」「健康問題」「経済生活問題」「勤務問題」「男女問題」「学校問題」の6つの原因・動機のうち「経済生活問題」以外の5つの原因・動機の全体に占める割合は、年によって大きく変動していません。
しかしながら、「経済生活問題」を見ると、年によって大きく変動し、その度合いは景気の悪化に密接に関係があります。
失業率と自殺率の相関関係とは?!
嘉悦大学教授で数量政策経済学者高橋洋一さん(元財務官僚)によると以下のような分析がされています。
具体的には、『失業率が高まると自殺率は高くなる傾向があり、1980~2012年の間の両者の相関係数は「0.87」となって』います。これは、失業率を1%低下させることができると、3,000人程度の自殺者を少なくすることができる計算だ。
高橋さんはさらに、以下のように主張しています。
こうした時系列については、トレンドの影響を受けるために、見かけ上、相関係数が高くなるという意見もあるが、トレンドを除去しても、失業率と自殺率には高い相関が見られる。前述した自殺の原因・動機の統計でも、09年の経済生活問題は8377件であったが、12年には5219件と3000件程度減少した。これは09年に5%超と高かった失業率が、その後低下したことを反映している。13年の自殺者数の低下も、景気回復とともに失業率の低下を受けたものだろう。
ところで、米国のイエレン新FRB(連邦準備制度理事会)議長が、量的緩和政策の「出口戦略」のカギは失業率の低下になると強調していることからも明らかだが、本コラムの読者であれば、失業率については、金融政策で対処できることを知っているだろう。
筆者が「金融政策」を重視するのも、失業率の低下は自殺者数の減少という社会の安定に大きく役立つからだ。もちろん自殺対策そのものも重要だが、金融政策ほど明確に自殺対策になるものはめったにない。経済生活問題以外の5つの原因・動機を減らすのはなかなか難しいが、経済生活問題に起因する自殺は減らすことが容易だ。
金融政策によってできることは、自殺の防止だけでない。実は強盗も減らせる。1980~2012年における強盗と失業率の相関係数も0・8と高いのだ。失業率を1%低下させると、600件(10万人当たりの強盗件数を0・5件)少なくできることになる。カネ欲しさの強盗は、失業せずにしっかり働ければ防げるからだ。
こうして考えてくると、失業率を低下させることの意義は大きいことがわかるだろう。他にも生活保護の受給者も少なくなる。生活の最低ラインを確保するには、まず失業率を低下させることだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
https://diamond.jp/articles/-/191739 記事から一部転載
【高橋さんの主張】金融政策が雇用政策である!!
高橋さんの学説は、金融緩和政策に関して積極派だと言われています。前述の記事では以下のように続いています。
そもそも日本では金融政策が雇用政策であるということすら認識されていない。
昨年10月に出された白川方明・前日本銀行総裁の著書『中央銀行』にも、金融政策と雇用との関係の記述は一切ない。
このことは2018年11月1日付本コラム『白川前日銀総裁は「デフレ大好き人間」と、著作を読んで納得した』でも書いた。
また金融政策と社会安定の関係についての日銀の認識も、はっきり言えば心もとない。
2013年4月、黒田東彦・日銀総裁は総裁就任の記者会見で、デフレが長く続く中で、自殺者数が高止まりしていることと金融政策の責任を問われたが、その発言がそのことを示している。
「自殺云々の話は、昔から有名な──確か大学の時に習いましたが──、デュルケムという有名な社会学者の研究など色々ありますが、私が日本銀行総裁として、わが国における自殺の原因について特別の知見があるわけでもありません」と、答えただけだった。
筆者は、米国プリンストン大に留学した時に、後にFRB議長になったバーナンキ教授やノーベル経済学賞受賞のクルーグマン教授、FRB元副議長ブラインダー教授、スウェーデン中央銀行副総裁になったスベンソン教授らの講義を聴いたり話をしたりする機会があった。
彼らの間では、中央銀行が雇用に責任を持つことは、常識中の常識だった。
また雇用(失業率)と自殺率の間に相関があるのは、上記の図や社会学的にみても明らかだ。
したがって、金融政策が自殺の多寡に大きく関係するのは当然だろう。
金融政策と雇用でいえば、日本の経済学者で、上記のマクロ経済の関係を数量的に理解している学者は一流でも少ないように思われる。数学や統計の基礎訓練が海外と比較してできていないからだろう。
まとめ:「政治論」は語らないが「政治の行く末には注目」する!!
このブログサイトでは「政治論」は主眼でないので語ってきませんでした。ただし、経済政策に関しては『資産に変える』に直結するファクターなので、今後は、今回のような社会問題も取り上げていくつもりです。
高橋洋一さんの分析は、筆者がわが国の近未来を予想する際に「参考にしている学者」です。分析とはこうあるべき!!というのを教えてくれた存在でもあります。
冒頭のタイトルにあるように『お金がないと…』とならないように、多くの方たちが『資産に変える』という発想を持っていただきたい思っています。その意味でも、今後も、有益な情報を皆さまと共有できれば…と考えています。