今回の記事は『メタ認知』についてです。近年、心理学の世界では「メタ認知」という分野の研究が盛んになり、心理療法の場でも「メタ認知療法」が活用されるようになりました。さらに、この分野は「ビジネスのスキルアップ」にも有効な手法となり、人材育成の観点でも注目を集めています。
「メタ認知」とは、自分が認知していることを客観的に把握し、制御すること。言い換えれば『認知していることを認知すること』です。
【メタ認知】を知ろう!メタ認知を使ったビジネスのスキルアップ
筆者は、メタの題材については、以前は別の形でブログ記事にしました。
前回の記事では、主にテレビの世界、特にお笑いネタの分野での「メタ」を語りましたが、今回は本格的な心理学や行動療法の分野の話をします。
メタ認知は「認知心理学」の分野
「メタ認知」は、1976年、ジョン・H・フラベルがメタ認知の基本となる概念「メタ記憶」を定義した概念です。
その後、研究は進められてはいましたが、2000年代まであまり知られることはありませんでした。
メタの意味
メタ認知の「メタ」には、「高次の」という意味があります。従って自分が「認知している」こと、たとえば記憶や思考、学習したことなどを、「高次の=メタ=視点から認知しよう」というのが「メタ認知」の直接的な意味となります。
メタ認知の定義
メタ認知の定義は、「認知していることを認知すること」です。つまり、人が認知するに至ったきっかけから結果に至るまでのすべてのことを、自分自身で把握する、ということです。
例えば、自らが能動的に行っている言動について、もう一人の自分が「客観的な立場」から、その言動を調整したり調和したりしています。これらの能力を「メタ認知」と定義しているのです。
「メタ認知」の2つの働き
メタ認知には2つの種類があります。両者にはどのような違いがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
その1【メタ認知的知識】
「メタ認知的知識」とは、自分の短所や長所など、「自分自身について知っている知識」です。
例えば『人前で話すのは苦手だが、他人のの話を聞くのが得意だ』など、自分で把握して知識として理解できることを言います。自分自身を分析して得た知識です。
ただし、「自己分析と把握」ができたとしても、メタ認知能力が高いとは言えません。そこから先へ一歩踏み込んで、認知的知識をもとに、不得意とする分野への対処法までを把握できて「メタ認知能力を高めること」が可能です。
その2【メタ認知的技能】
「メタ認知的技能」とは、メタ認知的知識を把握した上で、現在の自分自身がどのようであるか?!を確認したり、対策を講じたりする能力のことです。
これは「メタ認知的モニタリング」と「メタ認知的コントロール」の2つに分かれます。
メタ認知的モニタリング
メタ認知的知識を「現在の自分」に照らし合わせ、悪い方向になっていないか、知識が足りているかなどを確認作業していく。
メタ認知的コントロール
モニタリングで確認できたことを踏まえて感情をコントロールする。また、改善に向けて行動を変え工夫することなどです。
メタ認知の能力が高い人と低い人の違い
メタ認知能力の高さは、どのような状況で発揮されるのでしょうか。具体例を見てみましょう。
【メタ認知能力が高い人の場合(具体例)】
良好な人間関係を築くには、メタ認知能力の高さが重要となります。恋人と喧嘩をしてしまった場合、お互いに腹を立てて相手のマイナス面ばかり考えてしまいます。そんなときメタ認知能力が高い人であれば、ただ腹を立てるだけでなく、「どうして相手が怒ったのか」「自分に非はなかったのか」ということを客観的に考えて、分析できます。
【メタ認知能力が低い人の場合(具体例)】
メタ認知能力の低い人は、相手の希望は一切考えずに「自分が食べたい」という理由でラーメン屋に連れていく、といった行動を取ります。相手の好きな食べ物がラーメンではないと知っていたとしても、お構いなしに自分のしたいことをしてしまうのです。
人間関係全般で同じようなことが繰り返し起こるので、周りから「空気を読めない人」と思われやすくなります。
「メタ認知」をトレーニングする重要性と必要性は?!
既に述べたように「メタ認知能力の重要性」については、ここまで読んでいただいた方には伝わったかと思います。
メタ認知を学ぶメリット・利点
メタ認知能力を高めておくと、次のようなメリットを得ることができます。
変化の激しい時代に適応できる人材になる
AIなどの普及で、次世代は劇的に変化していきます。「メタ認知能力」は、このような変化の激しい時代に対応するための大切な力を蓄えます。
自己分析が上手になる
「メタ認知能力」が高い人は、自己分析能力にも優れています。自分を客観視できるば、自らの課題や弱点も見えてきます。こうした課題を冷静で客観的な自己分析ができれば、克服することが可能となります。
メタ認知の能力を高める方法とは?
メタ認知能力を高める方法には、どのようなものがあるのでしょう。ここからは、メタ認知能力を高める方法をいくつか挙げてみます。
メタ認知的モニタリング
メタ認知的技能の一つ「モニタリング」です。自分を客観視し、思考や行動の傾向や短所長所を確認していく作業です。
メタ認知的コントロール
メタ認知的技術「コントロール」です。モニタリングで得た情報をもとに、対処するための目標を立て、それに向けて行動していきます。
メタ認知トレーニングとは?
「メタ認知トレーニング(MCT)」は、「自分にはこういった傾向がある」という自己認知が無理なくできる仕組みになっています。
メタ認知トレーニング(MCT)は・・・、
・自らの認知バイアスを理解する ・モニターする ・コントロールする
・・・のステップに沿って訓練を進めていきます。
まとめ:「メタ認知」はさまざまな分野で活用されている!!
今回の記事では、「メタ認知」の基礎的な背景とビジネススキルの面での活用例を中心に紹介しました。
実は、筆者は自身の事業が失敗した経験から、一時期ではありますが、精神的に落ち込んで「誰とも会いたくない状態=引きこもり」になったことがあります。
その苦しい時期に、「メタ認知」の行動療法と出合って、自らの人生を復活させることができました。したがって、この分野のことを今後も、ブログ記事の中で紹介していきたいと思っております。
本日も、ブログ記事を最後まで読んでいただき心より感謝しております。皆さまの1日が平穏で実りあるものでありますように!!